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1.はじめに
現行の財産評価基本通達では、「取引相場のない株式」は会社規模や株主区分に応じて評価方式が使い分けられています。
大会社: 主として「類似業種比準方式」を適用。他の評価方式に比べて株価が比較的低く計算されます。
小会社: 主として「純資産価額方式」を適用(併用方式の選択も可能)。
同族株主等以外の株主: 「配当還元方式」を適用。他の評価方式に比べて株価がかなり割安で計算されます。
今回は、非上場株式の評価方法の見直しにおける現状の課題と国税庁の見直し案についてわかりやすく解説します。
2.現行制度の問題点と評価額圧縮スキーム
現行制度では、評価方式の違いにより同じ企業価値でも株価に大きな乖離が生じます。国税庁の有識者会議で論点とされた主なスキームは以下の通りです。
① 会社規模操作による評価額圧縮スキーム
大会社ほど類似業種比準方式により株価が低く算出されるため、従業員数の意図的な配置により「大会社」区分へ変更し、低い評価額を適用させる手法。
② 利益、純資産の一時的操作によるスキーム
オペレーティング・リースの活用や、役員退職金により一時的に評価時期の利益等を下げ株価を圧縮する手法。
③ グループ法人税制を活用した資産移転スキーム
グループ法人税制を利用して親会社の資産・事業を子会社へ移転させ、親会社の株価を意図的に下げる手法。
④ 配当還元方式の濫用スキーム
無議決権株式の発行、株主構成の操作により特例的な「配当還元方式」を適用させる手法。
3.国税庁の見直し案:残余利益方式
国税庁の有識者会議で評価体系の抜本的見直しとスキーム封じ込め策が打ち出されました。見直し案では、会社規模による区分を廃止し、将来の収益力に着目するインカムアプローチ「残余利益方式」への原則的一本化が示されています。
基本計算式は、
(直前期末の簿価純資産+企業の将来収益獲得能力)× しんしゃく率
とされており、企業の収益獲得能力は過去5年間の平均利益等から算定すると考えられるため、直前期のみの利益対策では効果が限定的になると思われます。
見直し案の通りとなれば類似業種比準方式は廃止、純資産価額方式は原則的評価方式から除外され、資産管理会社などの「特定の評価会社」に限定して適用されるようになります。
各種スキームも、
・正常利益による評価(役員退職金などの非経常的な損益を排除)
・グループ全体での一体評価
・配当還元方式の適用範囲縮小
による封じ込めが検討されています。
4.企業別の影響と実務対応
残余利益方式への移行により、大会社・高収益企業では、類似業種比準方式で抑えられていた株価が大幅に上昇する可能性があります。一方、小会社・赤字または低収益企業では、残余利益がゼロまたはマイナスとなり、評価額が簿価純資産を下回る可能性があります。
もし令和9年度税制改正で決定された場合には、早ければ令和10年1月から適用される可能性があります。株価上昇が予想される企業は、現行方式を利用できる間に前倒しで対策を実行するなど、スケジュールの再考が必要と考えられます。
自社のポジションを正確に検証するためにも、今後の与党税制改正大綱や国税庁の通達改正案の動向が引き続き注目されます。

