福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
1.はじめに
近年、企業を取り巻く賃金環境は大きく変化しています。
今年の賃上げ動向を見てみますと、賃上げ率「5%以上」の割合は、中小企業(42.6%)が大企業(41.4%)を上回っています。
深刻な人手不足を背景に、人材確保を急ぐ中小企業が、採用・定着のために一定の賃上げを行わざるを得ない状況となっていることが見て取れます。実際、中小企業庁の調査でも、賃上げ率が高い企業ほど採用した従業員の定着率が高い傾向が示されています。
今回は、賃上げ時代において企業に求められる人事施策について解説します。
2.評価や給与制度の見直し
毎年一律に基本給を引き上げ続けることには限界があります。そこで重要になるのが、「何を基準として、どの程度配分するのか」を明確にする評価や給与の制度です。
特に今後は、年齢や勤続年数を中心とした一律的な昇給から、「役割」「能力」「成果」「行動」などを評価し、昇給や賞与に適切に反映する仕組みへの見直しが重要になります。賃上げ原資が限られる企業ほど、全社員に同じように配分するのではなく、会社が求める役割や成果を明確にしたうえで、評価に応じたメリハリのある処遇を検討する必要があります。
3.給与以外の要素と働きやすさ
また、採用・定着の競争力は「給与」だけで決まるものではありません。
顕著に採用力に違いが生じる要素としては、「年間休日数」が挙げられます。昨年の厚生労働省調査によると、1企業平均の年間休日総数は112.4日、労働者1人平均では116.6日と、いずれも調査開始以降で過去最多となっています。また、年次有給休暇の平均取得率も66.9%と過去最高です。
求人を比較する求職者にとって、「月給がいくらか」だけでなく、「生活バランスに十分な休日数か」「残業はどの程度か」「有給休暇を取得しやすいか」といった点も、企業を選択する重要な判断材料になっています。
4.福利厚生と職場環境の整備
さらに掘り下げて求人を比較するにあたっては、「福利厚生」もポイントになっています。
住宅支援、育児両立支援、退職金や企業型確定拠出年金、資格取得支援など、従業員の生活やキャリア形成を支援する制度は、給与とは異なる形で企業の魅力を高めます。
また、職場での悩みとして多く挙げられるのは「人間関係」であるため、定期的な面談があるなど相談がしやすい環境、職場でのイベント等の交流など、いわゆる「心理的な安全」の確保を図る取り組みも、採用には役立つと考えられます。
5.おわりに
これからの人事戦略では、単純に「他社より高い給与を支払う」という発想だけでは十分ではないと考えられます。
① 求人相場から見た適正な賃金水準
② 納得感のある評価や給与制度
③ 休日・労働時間、休暇などの働きやすさ
④ 魅力ある福利厚生
⑤ 成長やキャリア形成の機会
⑥ 安心感のある人間関係
などの要素を一体として検討し、「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる環境をコツコツと作っていくことが必要です。
賃上げが当たり前になりつつある今だからこそ、賃金以外的人事労務施策を総合的に見直すことが重要になってきていると思います。

