2023.12.15更新
11 月の終わりに今年も京都に行ってきました。
驚いたのはホテルの価格です。京都のホテルは軒並み、コロナ前の 2~3 倍の室料になっており、それでも海外旅行者が殺到して稼働率は 75% を超えるというのですから、円安で日本がいかにリーズナブルかということでしょう。
一方先日、中洲のバーで事情通のマスターと話していた所、「儲かっているのは有名なラーメン屋さんくらいで、いわゆる中洲は不景気そのものだよ」との事でした。観光客が SNS の撮影目当てに歩いているけど、お店の中には入っていかないのだそうです。
コロナ騒ぎが終わっても全てがうまくいくというわけではないと、改めて思った次第です。
「退職金は会社で、長期運用する」
増税メガネと言われた日本のトップ。
インボイスや電子帳簿保存法など、本当にどうしようないものを導入してくれて、税理士としては迷惑そのものでした。しかし、NISA の大幅拡充だけは評価に値すると思っています。
デフレを通り越して、これだけインフレが常態となってくると、現預金、それも円だけで資産を持っている事はあまり得策とは言えません。ある程度資金を投資に回すことがリスクヘッジになる時代になってきたと言えます。
翻って経営者にとって、退職金をいくら取るか?はとても大きな問題です。
私は以前から、「役員給与は税や社会保険のコストが高いので、退職後の資金は会社で貯めた方が効率的」「退職金は生命保険などで簿外で積み立てる方が何かと良い」と提案してきました。税コストのこともありますし、例えば退職金を借入で賄うと、返する次の世代(要するにご子息)と喧嘩になることが非常に多いというのが理由の1つです。
簿外で貯めておけば、もともとそのお金は運転資金ではありませんから、「資金が流出する!」と、揉める可能性は極めて低いです。そのこと自体は何も変わっていません。
以前と少し変わったのは、退職金積立の主力である生命保険において、節税よりも運用という側面が強くなったことです。ある外資系の生命保険のトップセールスマンと話していたところ、この数年は経営者にドル建ての変額保険がとにかく売れているそうです。今後円高になる可能性もありますが、保障もしながらドル資産を増やせるので、ある意味リスクヘッジになると考える人が増えたと言えます。
とはいえ、お金を貯めるには 10 年単位の時間がかかりますし、生命保険に加入する場合は「健康である」という条件も必要です。思い立ったが吉日で始めるとよろしいかと思います。もちろん、生命保険ではなくインデックス系の投資信託など比較的安定した投資商品、政府系の小規模共済を活用しても良いと思います。
「良い会社はやめられる会社」
私の父(すでに他界)は、身体が弱かった反面、とにかく経営が上手かったと今更ながら思います。
その父が「良い会社とは、いつでもやめられる会社の事さ」とよく言ってました。なので不吉と叱られそうですが、当時はお客様の決算報告時に、「今、会社を閉じたらいくら残るか」を毎年計算して報告していました。
理想は①流動資産(現金や売掛金)で全ての借入を返済できること。
その次は②固定資産を売れば借入を返済できること。
要するに、資産におけるキャッシュの比率を上げておきなさいということです。業種にもよりますが、①の会社は意外と少ないのが実情です。
リーマンショック、コロナパンデミックと2つの大きな経営リスクを経験しましたが、結局生き残るのはキャッシュリッチな会社です。今後も様々な〇〇ショックが来ると思いますが、頼りになるのは現預金、あるいはすぐに換金可能な資産である事に変わりはないと思います。
さて、本年も皆様には大変お世話になり、グループを代表して心から感謝申し上げます。来年以降、コロナ騒ぎがいよいよ終わり、逆に政府からの補助金・助成金は縮小し、コロナ時の借入金を本格的に返済してゆく局面になっていくと思いますが、その分さらに気を引き締めて業務にあたる所存です。
この冬はインフルエンザに特に注意が必要との事。皆様くれぐれもご自愛いただき、良い年をお迎えください。
2023.12.01更新
スタッフ教育で悩んでいる方は、とっても多いと思います。
先日、19年連続で増収増益を果たした元トリンプジャパンの吉越浩一郎さんとお話しする機会がありました。吉越氏は、
「スタッフ教育には、教育と習育の2段階がある」
とおっしゃっていました。マニュアルに沿って基本的なことを教えるのが教育。しかし、そこから先は自ら習う姿勢を植え付けるのがとても大事だということです。
結婚式で有名なアイ・ケイ・ケイの金子 和斗志社長は、有望な社員は自分のカバン持ちにさせ、自らの考え方や仕事の仕方を目の前で見せるそうです。そこで習った方が幹部になっているのだとか。
私もこの手法はよく使っていまして、2〜3年目のある程度育ったスタッフと一緒にお客様を訪問し、目の前で仕事を見せています。行き帰りの車内では考え方について議論します。
すると、1年も経つとどこかしら私に似てきます。漫才の師匠と弟子のような感じです。こういったスタッフが記憶する限り20人ほどおりまして、彼らが社風を作っているのだと感じます。
全てをマニュアルに書き出す事は可能です。しかし、ハンバーガーショップで「床に落ちたパテは廃棄します」などと書いていたらキリがありません。
会社にとって大事にしたいことは、経営トップや幹部クラスが直接教え、考えさせるのが1番手っ取り早いと思う次第です。
2023.11.15更新
ラグビーワールドカップの決勝を早起きして見ました。ボール支配率60%、しかも長時間14人で戦ったニュージーランドは勝負に勝って、試合で負けた感じでしょうか。
ところで、今回のワールドカップは実力伯仲で僅差の試合が多く、それだけにレフェリーの技量も問題になっていました。決勝の主審であるバーンズ氏はまさに最高の技術を持っている方だったそうで、観客からのブーイングもほとんどありませんでした。レッドカードでもクレームが出なかったのは、「このレフェリーの判断なら仕方ない」というところでしょうか。
この先生でダメなら仕方ない
私はフェレットという子猫みたいな生き物を学生時代から通算9匹飼っています。自由気ままな生き物でして、犬と比べると格段に手間がいらないのですが、病気になった時に見てくれる獣医さんが非常に少ないのが難点です。
たまたま会社の近くで診てくれる医院を発見し、かれこれ10年以上通っています。この医院を見ていると、まさに24時間体制で稼働してまして、水曜の手術日以外は休みなく外来診療。他の日も昼休みに手術するなど、奥様と2人でほぼ休みなく働いておられます。
私としては「この医院でダメと言われたら仕方がないな・・・」と思うくらい努力なさっていますし、先生の技術を信頼しています。これだけ重労働だとスタッフがついて来れるのかな?と思うのですが、不思議なことにベテランのスタッフが多数在籍しているのです。
そこで、「ここは患者さんも滅茶苦茶多いし、土日も仕事だし、大変ではないですか?」と馴染みのスタッフさんに聞いてみたのですが、「もちろん大変ですよ。しかし、動物は可愛いですからやりがいがあります。何より今でも患者さんと一緒になって喜んだり涙している院長と奥様を尊敬しています」との事でした。
経営コンサルタントの小宮一慶氏は、著書「できる社長はこれしかやらない」の中で、
・最高のリーダーは自分の存在を意識させないリーダー
・その次は敬愛されるリーダー
・その次は恐れられるリーダー
・最悪は馬鹿にされるリーダー
と書いておられます。
この院長先生は一番上か、その次くらいに位置しているのでしょう。ちなみに私は多分下から二番目の怖い系ですかね・・。馬鹿にされるのは論外として、一段でも上に行きたいと毎月通院するたびに思う次第です。
誰のために頑張るのか?
世相を反映して、最近スタッフの退職や人手不足に関するご相談をよく受けます。弊社も採用に苦労しているのは同じでして、皆様の気持ちはよくわかるつもりです。AI 活用による省力化や外国人採用など解決の選択肢は様々ですが、「これさえしておけば大丈夫」という必殺技はないので、ハイブリッドで色々試すしかないと思っております。
ただ、大量退職など会社を揺るがすような大問題が起こる先には共通点があるように感じます。それは、経営理念が無い、あるいはあっても形骸化していることです。
経営理念の大切さは以前にもしつこいほど書きましたが、理念がない企業は要するに、「経営者である俺の貯金のために働け!」とスタッフから受け取られてしまうのです。ですから、離職率が高いと感じる場合は、基本に立ち返って会社の存在意義、経営理念をもう一度見直してみては?と思う次第です。
「うちは◯◯して社会の役に立ちたい。役に立って得た利益はみんなに還元する。だからみんな協力してくれ!」というのが組織活動の根底だと思います。また、経営者は、結局のところどれだけ大きな組織を作ったか?多額の資産を貯めたか?ではなく、「どれだけ多くのものを配れたか?どれだけ多くのに喜んでもらえたか?」で評価が決まると思います。
特にスタートしたばかりの頃はそんな事を考える余裕などないと思いますが、ふとした時に思い出していただければ幸いです。
最近、亡くなった大先輩税理士の言葉をよく思い出します。「菅君、『得たければ先ず配れ』の精神が大事だよ。」
2023.10.16更新
先日、サザンオールスターズの 45 周年ライブに茅ヶ崎まで行ってきました。私はかろうじてデビューの時を覚えていまして、「裸で歌ってドリフみたいだな」・・・と。
実際、桑田氏はいかりや長介氏から直々にドリフに誘われたことがあるそうです。いとしのエリーなど、懐かしい曲が流れると、色々な思いが交錯しますね。年と共に涙もろくなっているのも実感しました。
「人口は嘘をつかない」
経営の神様と言っても良いでしょう、ピーター・F・ドラッカー博士の言葉です。博士は「自分は予言者ではない」と常々語っていました。さらには「私は経済学者でもない」と言っていたようですが、博士の予言めいた予測は恐ろしいほどの確度で当たっていたのは周知の事実と思います。
バブルが弾けた直後に「日本は工業等の面で優れた技術を持っているが、情報と金融の分野に関してはアメリカに 10 年劣る」と語っていたそうです。
具体的に言えば、SONY のウォークマンの性能はレコーダーとしては素晴らしいが、iPod、さらには iPhone のような配信ビジネスによるイノベーションは起こせなかったわけです。博士が常々言う「顧客の創造」に関して、ことごとくアメリカの後塵を拝しているのは今も変わらないですね。
博士はその国の未来や発展を考える際、人口を重要なファクターに置いていました。それは、「経済指標は嘘が満ちているが、人口は嘘をつかない」からだそうです。
どんなに優秀な研究者でも土台となるデータが不正確では話になりませんからね。その人口問題、日本は戦争によって大きく人口構成が歪められ、団塊世代と団塊ジュニア世代というたった6~7世代に人口の15%が集中しており、様々なブームやトレンドを作り出してきました。この世代のニーズやウォンツはビジネスに直結しますから、常にキャッチアップされては?と思います。
翻って、国の経済的なピークは40歳の人口がピークになる時と深い相関性があるそうです。日本ではバブル景気とアベノミクス初期がこれに当たりますから既にピークアウトしています・・・アメリカやインドなどはこれからピークが訪れますが、逆に韓国は1を下回る世界最低水準の出生率で、日本よりさらに深刻な人口減少に見舞われるのが確定的ですから、今後投資やビジネスを行う際の参考になればと思います。
経営は未来を予測することで失敗する確率が下がります。足元ばかり見ているといつの間にか歩く方向がずれているのと同じです。
自分の周囲の環境は将来どうなるのか?どうなるのが1 番怖いか?を常々考えておくことが大事かなと思います。
「困ったことは強みでもある」
春先に、「幸せは不幸の顔をしてやってくる」と書きました。この人口問題ですら日本にとっては大きなチャンスなのだと博士は語ったそうです。つまり、この問題をいかに対処していくか?はまさにノウハウの構築そのものであり、他国に輸出することでビジネスになるというわけです。
経営をしていると、良いことと悪いことは本当に交互にやってきますが、ピンチはチャンス、不幸は幸せに繋がっていると思えば少しは気が楽になります。
博士に大きな影響を受けた経営コンサルタントの小宮一慶氏は、良い会社とは、「顧客に喜ばれる商品を提供し、社会貢献している」「働く人が幸せである」「高収益である」と実にシンプルに定義しています。シンプルなのですが、高収益というのは相当難しいというのが私の所感です。売上は根性でなんとかなることも多いですが、利益を残すには知恵が必要です。その利益がなければ働く人に経済的な幸せを提供できません。これらは相互に結びついて螺旋のようになっているのだと思います。
未来を予測しつつ、残された期間で周囲をいかに幸せにできるか?サザンオールスターズにたくさんの感動をもらって、そんな事を考えながら九州へ帰りました。
2023.09.15更新
先日、母が大腿骨を折り、緊急手術しました。 理由はダンス教室(マツケンサンバ?)でコケたとのことで・・・ 老々?介護を覚悟しましたが、幸い一か月ほどで以前の生活に戻ることができました。 今は骨がつくのを待たずに、折れた部分を人工骨に変えて、 手術の翌日から歩行のリハビリをするそうです。
医学の進歩はすごいですね。
と同時に、我々団塊ジュニアが高齢者になる2040年問題は 日本が味わったことのない深刻な問題なのだと改めて思いました。 なにせ、800万人が税金やサービスを提供する側から、受け取る側へ移行するのですから・・。
退職金の税制改正に注目
先日、退職金の税金に関するニュースが流れました。 退職金は日本の税制でも最優遇されています。 退職金には手厚い控除がありまして、
・勤務期間20年以下・・・年40万円 合計800万円
・勤務期間20年超・・・年70万円
仮に30年間同一企業で働けば、1500万円までは1円も税金がかかりません。 もちろん、支給する会社側は全額経費です。
今回報道されたのは、この70万円の部分を40万円に統一するというものでした。
理由は「労働の流動性を妨げている」とのことですが、退職金控除のために 勤務し続ける人はいないので、政府の「大嘘」であることは間違いないです。
さて、この退職金ですが、実はもっと大きなメリットがあります。 それは、どれだけもらっても、その1/2にしか課税されないということです。 つまり、1億円もらっても、10億円もらっても、税金がかかるのは半分だけということになっています。 これは事業承継対策の切り札的に使われていますし、 老後の資金は「税率の高い個人で貯めずに法人で貯める」という手法の源にもなっています。
私は岸田総理の「新しい資本主義」というのは、要するに「格差是正」の言い換えだと思っています。 就任早々に株式の譲渡益課税(20%)を強化することを表明していましたが、 今回の退職金控除の是正は、富裕層に多大なメリットがある1/2課税を改正するための布石なのでは?と疑っています。
例えば、「退職金1億円以上の部分について、1/2課税をとりやめる」なんて改正は、 いつあってもおかしくありません。 なにせ、一番の人口ボリュームゾーンの団塊ジュニアがあと10年で続々退職するのです。 大きな魚群が眼の前にいるのにみすみす見逃すはずはないと思っています。
複数人で、複数のタイミングで退職金を受け取る
ではどうすればよいか?ということですが、
1. 退職金を受け取る人を増やす
2. 複数の会社から分散して受け取る
3. 退職金を受け取るタイミングをずらす
を予防策として推奨しています。
例えば御社がメーカーで夫婦ともに役員でしたら、製造会社と販社に会社を分割します。 そして、例えば販社の社長に奥様が赴任する際には、元のメーカーから退職金が支給可能になります。その後、販社から退職する際は、再度退職金を受け取ることが可能になります。 同様のことを社長にも行うと、夫婦で計4回退職金を受給できます。
ちなみに、医療法人なら MS 法人を検討すればよいです。 さらにいうと、小規模共済や確定拠出年金などを組み合わせて、 退職金のメリットをさらに上乗せすることも可能です。 税法の規定で、最初の退職金受給から5年超経過しておく必要はありますが、 現時点でもできる予防法と思っております。もちろん、その上を行くような改正(改悪?)されたらアウトですが。
美味すぎる話は必ずなくなる
先日、行き過ぎた相続税対策に繋がっているとのことで、タワーマンションの相続税評価が大幅に改正されました。 アメリカ不動産、アパートの消費税還付、足場リース・・・美味しい節税は 必ずといってよい程どこかで是正が入ります。 ある程度メスが入ることを見込んで、対策を取っておくことが大事ではないかな? と思う次第です。
今回は久しぶりに税理士っぽいことを書きました。
よく疑われますが、普段は税理士として普通に働いておりますので、 税務のご相談がございましたら、いつでもお声掛けください!
2023.09.01更新
20年前と違って、中小企業も売れる時代になりました。
が、巷で喧伝されるような高値での取引は稀で、役員報酬や営業利益の4〜5年分を先取りするくらいが相場でしょうか。
むしろ、デューデリ(企業調査)の結果、思っていたよりも安い値段でしか売れない…というパターンをよくみます。
企業の価値はおおざっぱに言えば
1 会社の時価純資産
2 未来に安定して稼げるであろう利益
で決まります。
このうち、1で減算されるケースがよくあります。
・建物の老朽化や補修費用
・土地の価値下落
・貸付金など回収可能性の低い資産
・粉飾により計上された架空資産
・未払いの残業代
などは確実に減算される項目です。
特に社長への長期の貸付金や粉飾経理はその企業というか、経営者への印象を悪くし、結果として成約率を下げる可能性があります。
そのため、会社を売却する可能性があるなら整理しておく事を強くお勧めします。
会社の貸借対照表を綺麗にするのは、ディスプレイにある商品を磨くのと一緒ですが、5年〜など長期間かかる事も多いですので、気にかけていただければと思います。
2023.08.16更新
訪問した先々で「コロナは大丈夫だった?」とご心配いただき大変有り難く思いました。と同時に、この原稿が多くの方に読まれていることも実感し、改めて少しでも皆様に役立つことを書こうと思った次第です。
さて、経営は「常に営む」すなわち永続が最低限の目標になりますが、常に好調である事はおそらく不可能です。かの柳井正氏でさえ企業経営は「1勝9敗でよい」という名言を残されています。
私自身、20数年経営をしておりますが、スリル満点のジェットコースターに乗っているような感覚です。調子が悪いときほど本に救いを求めるのですが、過去にマスコミ等に「規範とすべき」と持ち上げられた会社は星の数ほどありました。
一方でいつの間にか名前を聞かなくなった会社も同じくらいあるでしょう。
今回は、一時はとてももてはやされた会社で、しかも私が過去に大きく影響を受けたものを 2 つご紹介します。
どうせなら格好良い会社で働きたい
元ワイキューブ、安田佳生氏の言葉です。
新卒採用のコンサルティングで一躍有名になりましたが、リーマンショックによる企業の採用控えが響きあっけなく倒産しました。質素倹約が最上の美徳とされる時に、彼は「お金をかけたオシャレで格好良い一等地のオフィスに入らないと、一流の人財は来ない」とオフィスへの積極投資を推奨。また、「社員教育で人は育たない。(名捕手の)古田はサボれば(凡庸な)カツノリになれるが、カツノリは努力しても古田にはなれない」と、採用、特に新卒採用への投資を主張しました。
不幸にも倒産しましたが、彼の言葉は今読み返してみると時代をある程度先取りしていたと思います。魅力のある企業に優秀な人財は集まり、結果として企業は発展します。よく考えれば当たり前のことを主張していたのだと思います。格好良いオフィスなどは、求職者に対してわかりやすい「魅力」なのだと思います。
夢に日付を
ワタミの渡邉美樹氏の代名詞的な言葉です。
夢は頭で考えるだけでなく、「実現する日付を書き込んで、そこから逆算してやるべき事を実行する事で実現する」というものでした。渡邉氏監修の手帳は大ヒットし、私も買いました。
しかし、2008 年にワタミの若手スタッフが過労自殺するなどブラックな企業体質が大問題となり、企業の評判は地に堕ちました。
業績も 2000 年代初頭は対前年 20% 台の驚くべき成長率を誇りましたが、2015 年からはマイナス傾向。今もコロナ前の業績を回復できずにいます。
ワタミの凋落は当時渡邉氏のファンだった私にはとても残念な出来事でしたが、夢に日付を入れるというのは素晴らしい事だと今でも思っています。エンゼルスの大谷選手の将来の夢と今やるべき事を書いた曼荼羅チャートが話題になりましたが、渡邉氏の言っていたことも実はほとんど同じです。
夢は逆算してこそ叶うというところでしょうか。
しかしまあ、つい最近のビッグモーター然り、カリスマと言われた経営者が過ちを犯して凋落していく姿は悲しいものがありますね。
経営者である私の叔父は「人は生きている間は完全無欠な存在になれるわけがない」と以前語っていました。
なるほどそうかなと思います。
どこに落とし穴があるかは本当にわからないものです。
これからも多くの人物が時の人となり、各種のメディアで取り上げられると思います。しかしその人が語る経営のノウハウを盲目的に自社に受け入れるのは考えものです。
大事なのは、「なぜその企業が成功しているのか?」まずは自分なりに冷静に分析する事だと思います。そして、自社に適している形にきちんとアレンジした上で取り入れれば、経営は良い方向に向かうのではと思う次第です。
2023.08.01更新
ある会社は本業のカラオケ機器レンタルが行き詰まり、億単位の借金を抱えました。
顧問税理士の私は返済不能と判断して、早期に破産する事を勧めました。しかし、銀行返済を止めている間に副業だった介護事業の業績が伸び、今も元気に活動しておられます。
ちなみに、顧問契約は「我が社と方針が違う」という事で解約されました…。これは私にとって忘れられない判断ミスとなりました。
またある会社は、繁華街の飲食店出店が大赤字。
これが足を引っ張って本業まで影響し、やはり億単位の借入返済が不能となり経営破綻しました。しかし、建物や土地など本業継続に必要な大半の資産は別会社が所有しており、こちらは担保に取られていなかったため、破産せずに本業を復活させる事が出来ました。
この会社、今はとても手堅く事業を展開しておられます。
成功は失敗の始まりかもしれないし、失敗は成功の始まりかもしれません。
経営の結果は、ほとんど全部が社長の判断にかかっていますが、上記2社は経営トップが最後まで諦めなかった事が共通していました。
何かの参考になれば幸いです。
2023.07.14更新
5 月末に、ついにコロナにかかりました…。喉の痛みはなかなかキツかったです。5 類になってもコロナはコロナ。気をつけなくてはいけませんね!
経営にはこうやったら成功するという王道はおそらくないのですが、「こうやったら失敗する」「こういう風にやったほうが確率が良い」というのはあります。20 年ほど経営をしてきてこれはと思うものを今回ご紹介したいと思います。
①スタッフとの約束は絶対である
ある会社が、利益が出たら決算賞与を出すとスタッフに約束しました。スタッフたちは喜び、仕事に励み、基準を満たし、利益が上がりました。しかし、社長は来年の仕事の受注状況を考えて賞与を出しませんでした。
結果として、大量退職につながり、会社は危機に陥りました。
おそらく賞与を数百万円支払ったとしても会社が潰れるほどの影響はなかったでしょうから、支払うべきだったと思います。この会社は業績を取り戻すのにかなりの時間を要しました。スタッフとの、特にお金に関する約束は絶対に守る姿勢が必要だと思います。
②頑張ったら頑張っただけ
ある会社が主力製品の製造工程を 2 チームに分けて、面白い実験をしました。
A チーム 1 個◯円 と言う請負制で作ってもらう
B チーム 時給で給与支給する
結果から言うと、A チームの圧勝でした。同じ時間で 2 倍の製品を作り、しかも品質がむしろ上がったそうです。頑張っても頑張らなくても結果が同じなら、「頑張らないのがスタッフの当たり前」です。頑張った結果には、せめてお金で報いることがとても大事だと思います。
ちなみに、このケースで請負のための別会社を作ると、消費税や社会保険料を大幅に圧縮できる可能性があります。
③役員貸付金は出来る限り作らない
役員貸付金とは、経費にならないお金で、役員が個人的な目的で消費したものです。
医療法人の場合は、法人成りの際の借入引継ぎの関係等でどうしても発生する場合がありますが、そこは気にされなくてよいです。しかし、度を越した交際費や使途不明金はいろいろ不都合が生じます。税務調査でも問題にされますし、銀行に「資産性がない」と判断されれば、利益剰余金から引かれてしまい、融資を受ける際に悪影響が出ます。
また、経理スタッフが反旗を翻して「うちの社長は、スタッフが稼いだお金を遊びに使っている」と SNS に投稿した例もあります。かく言う私も、WOWOW の視聴料がうっかり経費精算に混ざっていて、「菅はこんなものまで経費にしようとしている」と、陰口を叩かれた苦い経験があります。
貸付金は放置して金額が大きくなると返済が大変になりますので、できれば毎月、最低でも年に一回精算するよう心がけてはいかがでしょうか。
④経営理念を作る
日本企業の約半数には経営理念が無いそうです。言葉だけの理念に何の意味があるか?と思われる方もいると思います。私もかつてはどうでもよいと思ってました。しかし、規模が拡大するにつれ、会社は、経営理念を中心に運営されるのだと考えるようになりました。
例えばスタッフに「頑張れ!」と促す場合、理念のない会社では、「なんで社長のために頑張らないといけないの?」となります。自分の頑張りが社会貢献に通じ、結果に見合う報酬が入ってくるならば、スタッフは自ずと頑張ってくれます。
理念のある会社とない会社では、利益率が 40% 以上違うという研究結果もあります。過去に起きた戦争も大義名分のないものは必ず負けにつながっていますが、経営理念は企業が存在する大義名分だと思う次第です。
2023.07.03更新
小学校の頃を思い出してみてください。
クラスの担任発表は一大イベントじゃなかったですか?
人気のある先生に当たると大歓声!
そうでない先生に当たると、マジか!?
…てな感じで。
ところで、人気のある先生は大体”優しい先生”ではなかったですか?もしくは話が面白い先生か。
私もある年、とても優しくて面白いと評判の先生が担任となり、とても喜んでいました。
しかし、ある日の放課後に呼び出され、
「おい、菅、喧嘩はするなよ。お前が喧嘩すると管理不足とか言われて面倒なんだよ。俺は面倒なことはしたくないんだ」
…!
なるほど、この先生が普段優しいのは面倒を起こしたくない、要するに自分のためなんだと子供ながらに理解しました。それ以降、その先生の言うことを素直に聞けなくなりました。「どうせ、あんたが面倒なんやろ?」と。
まぁ、喧嘩ばかりしてた私が一番悪いんですけどね。
魅力のある人は、なんというか、深みがあって底が見えない感じです。しかし、何かのキッカケで底が見えた瞬間にその魅力が消滅します。
翻って、経営者はいかに底を見せないか?がとても大事で、ある意味俳優業でもあります。ある時は寛大に、ある時は尊大に、ある時はジャイアンのように、ある時は映画版ののび太のように…
1人で何役もこなす必要があります。
でも根底に自分ファーストでなく、スタッフを思いやる気持ちがあるか?がとても大事で、上辺の演技では何かの拍子に底が割れます。逆に、下手でも心から演じ続けていれば、やがてはそれが自分自身になります。
話が長くなりました。
間違っても、部下に
「俺に面倒かけんなよ!」
などと言わないよう、くれぐれもご注意下さい!
2023.06.15更新
「勝ちには不思議な勝ちがあるが、負ける時には必ず理由がある。」
プロ野球の名将・野村監督がよく口にしていた言葉です。先日の私の誕生日4月24日、この日は戦国時代に賤ヶ岳で負けた柴田勝家公が落城自刃した日なのだそうです。
勝った羽柴(豊臣)秀吉こそが織田家の家臣筆頭のように思われている方も多いのですが、実のところ筆頭家老は長年にわたり柴田勝家でした。順番で行くと、柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、その次が秀吉と明智光秀でした。ですから、立場から言えば圧倒的に上役の勝家が部下の秀吉に負けた…。
柔道で言うなら、軽量の古賀稔彦が無差別級の山下泰裕を一本背負いした感じでしょうか。(例えが古くてすみません…)
ではなぜ負けたのか?知っている事を書いてみます。
①行動力と広報戦略で負けた
信長が本能寺で死んだ際、柴田勝家は秀吉より近畿の近くにいながら山崎の合戦には間に合いませんでした。理由は交戦中の上杉景勝と即座に和睦しなかったためです。秀吉が毛利氏と即座に和睦して大急ぎで帰って来たのとは対照的です。そして、明智光秀を滅ぼした後、誰を後継者にするか?清洲で会議が行われました。
この模様は三谷幸喜の「清洲会議」という映画で面白おかしく描かれていますが、要するに行動が鈍かったことを丹羽長秀に指摘され、自分が押す織田信孝を後継者にすることができませんでした。後継者争いに負けた事で勝家の求心力は揺らぎ、後々の味方がずいぶん減ったそうです。また、柴田勝家は織田信長の葬式を執り行う権利を有していましたが、これをしませんでした。
勢い、秀吉が執り行ったのですが、これは秀吉が事実上の後継であることを広める効果がありました。広報戦でも秀吉が一枚上手だったと思います。
②情報戦で負けた
柴田勝家は北陸を拠点としていました。当然雪の間は動けません。その間に秀吉は勝家の甥の勝豊(長浜城)を味方に引き入れました。養子なのですが、最近勝家と不仲であるという情報を秀吉が握っていたとのこと。そして勝家が雪で即座に動けないのを確認して、同盟者の滝川一益(伊勢)を一気に攻めます。この間、秀吉は通常の何倍もの諜報活動と情報統制を行なったそうです。
一方、勝家は秀吉の動向を知らず、家康の狙いを読み違えて味方にすることにも失敗しています。勝家は情報戦でも負けていたと言えます。
③自信がありすぎた
賤ヶ岳の戦い自体は当初は互角かそれ以上に勝家が優勢でした。しかし、秀吉の本軍が勝家が思っていたよりも早く戦場に到着したため、均衡が崩れ、前田利家などの裏切り(戦線離脱)もあり、あっけなく負けてしまいます。
司馬遼太郎は勝家が負けた理由を「結局のところ自信がありすぎたのだ」と総括しています。自信があるがために細かい点に目が行き届かず、大雑把な戦略、戦術しか立てませんでした。
結果として準備万端の秀吉に負けたと解釈しています。
日本電産の永守会長は、最近の著書で「経営者は臆病なくらいがちょうど良い」と書いておられました。同様のことは多くの著名な経営者が語っています。人は臆病だからこそ念入りに準備しますし、失敗しないよう工夫します。これは戦国時代も現代も変わらないのだと思います。
生成 AI の爆発的な進化、世界が体験したことのない人口減少、資源価格の乱高下、円安、金融不安・・・様々なことが日々起こります。こうした現実を追いかけるのは勿論とても大切なことです。しかし、変動が激しい今だからこそ歴史を振り返ることがヒントになることも多いと思うこの頃です。
2023.06.01更新
5月から自転車に乗る時はヘルメットを被るのが努力義務とされました。交通事故で、ヘルメットをしていない人の致死率は3倍に跳ね上がるのだそうです。
で、今日、通勤の約20分間すれ違う自転車を見ていたのですが、ヘルメットを被っていた人はたった1人でした。多分100台以上はすれ違ったと思います。まぁ予想はしていましたが、努力義務に効果はありませんね。
翻って、会社にはいろんなルールがあると思います。どんなに小さなルールも何か理由があってできているはずです。
例えば、弊社には日報を必ず書くというのがありますが、これはクライアントの状況を上長などが把握するために義務づけているものです。
導入当初、日報を書いていない人には罰則はありませんでした。しかしルールは必ず破る人がでます。弊社も特定の人の提出がルーズでした。
これは、放置すると流行病のように感染していきます。そしてそのルールは形骸化します。こうした事がいくつか続くと、あらゆるルールが会社に定着しなくなり、その会社は機能不全に陥ります。
なので、この日報のルール、破った人は1回につき1,000円、決算賞与から引くことにしました。現金な話ですが効果はテキメンで、提出率はほぼ100%になりました。
ルールは全員が守らないと意味がありません。そのために、罰則も時には必要です。努力義務ではダメなのです。
PROFILE
Takuma Suga
代表社員税理士
菅 拓摩
はじめまして 福岡から長崎までわりと広域に活動している税理士です。 社員300名いますが、経営者としても、税理士としても修行中です。