税務
2023.11.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
「インボイス制度」が10月から始まり、来年1月から電子帳簿保存法が2年間の宥恕期間を経て本格始動します。その対応に苦慮している中でも待ってくれない年末調整。この期間をスムーズに乗り越えるため、令和4年からの変更点をお知らせします。
令和4年1月1日以降取得分より「住宅借入金等控除限度額」「控除率」「控除期間」が変更になります。令和4年中に居住の方は、一年目は確定申告となるため、今回の年末調整より対象となります。事前に新居を購入した従業員などをリストアップしておくことをおすすめします。また、新築住宅と中古住宅とでは「控除限度額」「控除期間」が異なりますのでご注意ください。
扶養控除の対象となる扶養親族の範囲「16歳以上の非居住者」のうち「30歳から69歳までの非居住者」については、下記に該当する場合のみ扶養親族の対象となります。
①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
②障害者
③その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を 38 万円以上受けている者
扶養控除を受ける場合は確認書類の添付が必要となります。早めに従業員に案内するようにしましょう。
この欄は配偶者や扶養親族に退職所得がある場合に記入が必要となります。記入をしないと適用漏れになる可能性がありますので、該当する方には案内をしてください。
年末調整は事前準備が作業速度に大きく関わります。早くから変更内容をしっかり把握して、事前案内を行い、この慌ただしくも大切な時期を乗り切っていきましょう!
税務
2023.11.02
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
労働力が不足する中で、バックオフィス(総務・経理)に労働力を割けない時代がやってきています。その中でインボイスの導入、電子帳簿保存法の施行で、バックオフィス業務の煩雑さも増えてきます。
これからは以下の3つが重要となってきます。
・ バックオフィスの DX
・ 紙の書類のデータ化
・ バックオフィスの外注
最近「DX」という単語を見る機会が増えていると思います。読み方は、「デジタルトランスフォーメーション」となり英語では Digital Transformation となります。
Trans は交差するという意味があるため、交差を 1 文字で表す「X」が用いられています。パソコンで意味を検索してみると、「企業が、ビッグデータなどのデータと AI や IoT をはじめとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立すること」と出てきます。
ちなみに IT 化は情報技術(IT)を活用して業務プロセスなどを効率化することで、一方の DX は、IT を含むデジタル技術を駆使してビジネスを変革し、新しい価値を生み出すことです。DX の重要なポイントは、単なる効率化ではなく業務プロセスの改善と、ビジネスモデルの変革だということです。
経理でいうと、請求書や領収書を紙でもらい、それを手書きの管理帳に転記し、更に会計ソフトへ手入力する、という一連の行為があります。
そこで、今流行りのクラウド会計を導入することでその作業が無くなるのか、というと、残念ながら無くなりません。ところが、請求書や領収書を電子データ化することでこの一連の作業が無くなります。これが業務プロセスの改善ということになります。
例えば、従業員の給与計算の基となるタイムカードも、最近では PC やスマートフォンで打刻し、勤務時間を自動集計し、そのまま給与計算ソフトに取り込むことができます。これもタイムカードがデータ化されることで業務プロセスの改善が行われた結果です。
すぐに電子化が難しい場合は、バックオフィス業務を外注する方法もあります。
アップパートナーズグループでは、記帳代行や給与計算もご要望に応じて対応させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。また、クラウド会計を導入したいなどのご要望もぜひ担当者までご連絡ください。
人事労務
2023.10.17
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
令和 5 年 10 月より最低賃金の額が引き上げられることになりました。
改定額の全国加重平均額は 1,004 円と昨年度の 961円から 43 円の引き上げとなっており、昭和 53 年度に目安制度が始まって以降で最高額となりました。アルバイトやパートの時給見直しだけでなく、正社員の方についても最低賃金を下回っていないかなどの確認が必要となります。
福岡県 900 円→941 円 (41 円増額)
佐賀県 853 円→900 円 (47 円増額)
長崎県 853 円→898 円 (45 円増額)
熊本県 853 円→898 円 (45 円増額)
東京都 1,072 円→1,113 円 (41 円増額)
大阪府 1,023 円→1,064 円 (41 円増額)
全国平均 961 円→1,004 円 (43 円増額)
(1) 時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2) 日給の場合
日給 ÷1 日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)
(3) 月給の場合
月給 ÷1 ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※上記以外の場合や詳しい計算方法については、ご依頼されている社会保険労務士または最寄りの都道府県労働局労働基準部賃金課室などにお尋ね下さい。
(1)中小企業向け賃上げ促進税制
こちらの制度は令和 4 年 4 月より既に適用されているもので、雇用者全体の給与等支給額が前年度比で 1.5%以上増加した場合には15%の税額控除の適用を受けることができます。
上乗せ要件として、雇用者全体の給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加した場合には 30%の税額控除の適用を受けることができます。また、教育訓練費の額が前年度比で 10%以上増加した場合には税額控除額を 10%上乗せすることができます。
(2)中小企業等経営強化法(経営力向上計画)
経営力向上に関する取組みを支援します。事業者は事業分野別指針等に沿って「経営力向上計画」を作成し、国の認定を受けることができます。認定された事業者は、法人税または所得税の計算において、即時償却または取得価額の 7%(一定の場合には 10%)の税額控除が選択適用できます。
最低賃金については、今後も引き上げが見込まれています。その状況に備えて、効率的な業務を検討していく必要があります。
税務
2023.10.03
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
農業経営をする上では、生産だけでなく販路拡大も重要な経営課題の一つです。
販路拡大を目指す中で、国内だけでなく国外に目を向ける方もいらっしゃると思います。
今回は、令和2年4月1日からスタートしている「輸出事業計画」をご紹介します。
「輸出事業計画」とは、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(令和元年法律第57号)第37条」に基づき、
日本国内で生産された農林水産物又は食品の輸出のための取り組みを行う事業者が、輸出事業計画を作成して農林水産大臣による認定を受けたものをいいます。
・国が実施する輸出関連補助事業の優先採択(施設整備等に対するハード事業と取り組みに対するソフト事業)
・日本政策金融公庫による制度融資制度(農林水産物・食品輸出基盤強化資金)
・輸出事業計画に従って機械装置・建物等の取得をした場合の5年間の割増償却(要件あり、補助事業を受けている場合は適用不可)
・農地転用手続きのワンストップ化 など
輸出事業計画は、策定の目的により分類され、それぞれの分類によって、認定までの流れが異なりますが、図のとおりです。
具体的な申請の流れや、様式につきましては農林水産省のHP でご確認ください。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/yusyutsu_keikaku.html
認定済みの輸出事業計画は、一部資料が公開されるようになっており、福岡・佐賀・長崎では、〈牛肉〉〈鶏肉〉〈温州みかん〉〈柿〉〈いちご〉〈博多ぶなしめじ〉〈茶〉〈米〉などが認定されています。( 令和5年8月1日時点 )
輸出事業計画の認定を受けるためには、予め GFP のコミュニティサイトに登録する必要があります。
GFP とは、Global Farmers /Fishermen/Foresters/FoodManufacturersProject の略称であり、農林水産省が推進する日本農林水産物の輸出プロジェクトのことです。
このサイトでは、輸出関連の有益な情報が詰まっており、ビジネスパートナーを探すことや、オンライン商談を行うことができます。
輸出に関心がある方は是非登録してみてください。
相続
2023.09.19
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
国税庁は今年6月、相続税や贈与税を計算する際に用いるマンションの評価額を見直すことを公表しました。これは自社株の評価にも影響します。
タワーマンションは市場価格に比べ相続税評価額が非常に低く、市場価格の3割程度になる場合もあります。それが過度な節税になっているという、いわゆる“総則6項”をめぐる最高裁判決が昨年の4月に確定し、納税者が敗訴しました。この判決を受けて、タワーマンションの評価額が規制されるのではないかと巷でも予測されていましたが、早くも新ルール案を国税庁が発表しました。
来年1 月以降の相続や贈与から変更される見込みです。
国税庁は独自に、評価の際に用いる計算式を定めました。現行の相続税評価額に、計算式を当てはめて市場価格に近づけるというイメージです。
区分マンションの相続税評価額の新計算式(案)
気になる東京や福岡のマンションをこの計算式に当てはめたところ、現行の相続税評価額の 2.5 倍や 3.7 倍になることがわかりました。
今後マンションを所有していても全く相続税や贈与税の対策にならないのか?
考え方としては、今までのような市場価格の3 割程という大幅な評価減にはなりませんが、市場価格の6割までは認められるようです。
また、規制の対象になるのは①区分所有のマンションで、②居住用とされていますので、一棟マンションやテナント貸しは規制の対象外となります。また、低層マンションは仮に新ルールの計算式に当てはめたとしても大きな影響はない模様です。
贈与や売却では取得者に不動産取得税がかかり、登録免許税も相続の 5 倍かかります。また、利回りの良い不動産や将来さらに市場価格が上がる不動産を、節税ありきで手放すのは早計だとも考えられます。
資産運用も兼ねて日々変化する不動産を使った節税策を検討中の方はアップパートナーズへ事前にご相談ください。
▼アップパートナーズグループ相続税サイトはこちら
https://upp-souzoku.com/
相続
2023.09.04
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
日頃、相続相談を受けていると、いらない土地を相続してしまい悩んでいる方がよくいらっしゃいます。
・手放したいけど、買い手がつかない…
・「無償であげる」と言っても誰ももらってくれない…
・今後続く固定資産税の支払い、管理費等を考えると頭がいたい…
そのような方々の助けとなる可能性がある 「相続土地国庫帰属法」 が令和5年 4 月に施行されました。簡単に説明すると、相続した土地が不要であれば、一定の手続き・費用負担で国に引き取ってもらえる制度です。
ただ手離しにどんな土地でも引き取りますという訳ではなく、そこには一定の要件が設定されています。その要件をクリアしたものが国に引き取ってもらえます。
今回はこの「相続土地国庫帰属法」について概要を説明したいと思います。
「相続又は遺贈(相続人に限る)によってその土地を取得した者」となっています。昔買った土地をもう使わなくなったからといってこの手続きはできませんし、生前に贈与してもらった土地なども対象外となります。あくまでも相続を経由して取得した土地が対象です。
ちなみにこの制度開始前に土地を相続した人でも申請することができます。土地が共有状態であっても、持分を取得した相続人を含む共有者全員で行えば申請することができます。
相続・遺贈によって取得した土地 (更地・山林・農地等)であって、国が定める要件をクリアしないといけません。細かな要件があるのですが、ざっくりまとめると、「抵当権等の設定や境界などに争いがなく、管理に必要以上の費用や労力がかからない、建物もない更地」という高いハードルが設定されており、この制度が積極的に活用されるのかかなり疑問を感じています。
要件をクリアできそうな土地は、そもそもこの制度を使わずに何とかなっていそうですし、要件をクリアできないような土地(境界がハッキリしない等)が残って社会問題になっているわけですが、国が(税金で)管理していくので、仕方がないのかもしれませんね。
申請窓口は法務局となり、国はまず法務局への事前相談を推奨しています。国への引き渡しを希望する土地の状況がわかる資料(登記簿謄本、公図、地積測量図、現況・全体がわかる写真等)を持参すれば、国が引き取ることができる土地に該当するか等について申請前に相談ができ、作成した申請書類も法務局が事前に確認してくれます。
審査には半年から1年程かかると言われていますので、現況で該当しそうな土地がある場合は早めの行動が得策かもしれませんね。
詳しくは「法務省 相続土地国庫帰属法」ホームページ上に記載されています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji1
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税務
2023.08.17
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
「ふるさと納税」は応援したい自治体に寄附をすることで、その自治体より特産品をもらえる上に所得税が控除されるお得な制度となっており、利用されている方も多くいらっしゃることと思います。それでは“企業”がふるさと納税をした場合はどうなるでしょうか。本日は「企業版ふるさと納税」についてお伝えいたします。
企業版ふるさと納税は、企業が自治体に寄附をすると税負担が軽減される制度です。主な手順としては下記のようになります。
①自治体が地方版総合戦略を策定し、地域再生計画を作成する。
↓
②内閣府が計画を認定する。
↓
③認定自治体が実施する「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対して企業が寄附を行う。
↓
④企業が税制上の優遇を受けられる。
どのような事業があるか、内閣府ポータルサイトに寄附募集事業が掲載されています。
▼企業版ふるさと納税ポータルサイト
https://www.chisou.go.jp/sousei/index.html
・寄附を行うことの代償として経済的な利益を受け取ることは禁止されています。
・企業の本社が所在する地方公共団体への寄附については対象となりません。
・1回あたり10万円以上の寄附が必要となります。
■寄附金額の約3割
地方公共団体へ寄附した場合、公共性が高いため全額が損金算入でき、法人税部分の減税効果があります。
■寄附金額の約6割
更に法人関係税から税額控除ができます。
令和2年度の税制改正にて、最大6割から最大9割に税の軽減効果が引き上げられました。
企業の課税所得金額や資本金等によって異なりますが、最大で寄附金額の約9割が軽減されます。
企業にとって地域を寄附で支援することは、その企業が社会的責任にしっかり向き合っていることとなり、取引先や金融機関に対する信用力向上にもつながります。
地域に貢献できて、企業のイメージアップにもつながる「企業版ふるさと納税」を検討されてはいかがでしょうか。
相続
2023.08.02
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
「終活」という言葉は 2009 年頃から広まり、新聞や雑誌、メディアなど様々な媒体で取り上げられるようになりました。
その一環で、「エンディングノート」が脚光を浴び、残される方々へ自身の希望を記入されている方もお見かけするようになりました。残された親族たちは、故人の「物」の処分一つにしても難しく、何をどうしたら良いか悩まれる方たちを何人も見てきました。本日は、電子マネーや航空機マイルなどの「デジタル遺産」についての相続についてお伝えします。
ある時、エンディングノートの中に、配偶者とお子様のために、故人だけでなく、ご遺族全員分の預貯金、生命保険など一覧にして残されていた方がいらっしゃいました。ご遺族は、よく分からないままでも、何を、誰に連絡すればよいか、その記録を頼りにスムーズにお手続きをされていました。故人が一手に財産管理をされていたそうで、ご遺族はその記録に安心されていたのが印象的でした。
最近では、インターネット専業の銀行口座や証券口座、暗号資産(ビットコイン等の仮想通貨)や電子マネーなど、いわゆる「デジタル資産」と呼ばれる財産も多く、把握することも容易ではありません。
そもそも相続の際にデジタル資産の存在に気付かない場合も多く、相続手続きもされないケースが出ているそうです。
さらに注意すべきは、デジタル資産を維持する(例:ネット契約の投資信託の信託報酬など)ための利用料金が発生してしまうケースや月額課金性(サブスクリプション)サービス契約をしている場合に、勝手に利用更新がなされて不要な費用請求が発生するケースです。有料のサービスはご遺族も存在に気づきにくく、気づいた時には大きな負担となる可能性もあります。
親と子どもが離れて暮らしている場合には、帰省の際に話した何気ない会話が隠れた資産を把握する手掛かりになります。親子で直接お金の話をしづらければ、残された親族らへ希望などを示すエンディングノートに、利用するサービスのアカウント ID を書き添えておくと、子どもは各社とのやり取りをスムーズに進めることができます。
★「デジタル資産」を円滑に相続するためのポイント3選★
①利用しているサービス(インターネットで利用・契約している金融機関、証券会社や保険会社なども含む)や ID をノートなどに書き残す(スマホのメモ機能等も OK)
②利用頻度の少ないサービスの取引を整理し、減らしておく
③電子マネーや航空会社のマイレージポイントも引き継ぎ可能な資産であることを知っておく
いかがでしたでしょうか?今回の内容を将来的に「終活」を始められるときのヒントにしていただけますと幸いです。
ほとんどの電子マネーへのチャージは数万円が上限ですが、PayPay は、最大200万円までチャージできるそうなのでご注意ください。
相続についてのご相談は税理士法人アップパートナーズまでお気軽にご相談ください。
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税務
2023.07.18
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
新型コロナウイルス感染症が 5 類感染症に移行され、税務調査も以前と同様の調査スタイルに戻りました。基本は税務署からの事前通知後に任意の日時で、3 日間の実地調査です。
調査官の人数は事業規模によりますが、以前と比べ調査官 1名での実地調査が増え、2 名で来る場合は若手の調査官と退官後に再任用されたベテランの調査官のペアが多いように感じます。税務署も団塊の世代が退官し、人手不足のようです。
税務署は他の官公庁と違い、7 月から翌年 6 月が事務年度になっています。新しい事務年度が始まると、新たな署の体制となり、税務調査の依頼件数も増えてきます。
法人税および法人の消費税の実地調査件数は、コロナ以前は年間約 9 万件超で推移していたのが、コロナ禍の 2019 年事務年度を境に激減し、2020 年事務年度は約 4 分の 1 の 2 万件弱まで落ち込みました。このデータからも、7 月からの 2023 年新事務年度は実地調査依頼が大幅に増えることが予想されます。
コロナが落ち着き、実地調査が緩和されて以降の調査の動向は、調査対象、調査項目を事前にかなり絞り込んできている印象です。実地調査が長らく制限されていたので、当然と言えば当然なのですが、以前に比べてかなり念入りな下調べをしてきています。
調査官は事業関連性があると想定される通帳は法人・個人いずれの通帳も照会出来る権限を持っております。必要と判断すれば、金融機関に反面調査に行くことも可能です。
事前の情報があれば納税地だけではなく、代表者の出身地の地銀の口座を照会することも有り得ます。調査初日の午前中は調査官から事業概況の聞き取りがありますが、その雑談の中に、調査官にとっては有用な情報が混じっていることも認識しておいてください。
税務署は適正・公平な課税の実現の為に、「一般取引資料せん」(以下、資料せん)という情報収集を行っています。資料せんとは、国税局又は税務署から法人及び個人事業者の方々に依頼をし、売上や仕入、外注費や地代家賃等の一定の金額以上の取引があった場合、その取引先について住所や振込口座・取引金額等を所定の用紙に記載して提出するものです。
この資料せんは、任意の提出なので、記載漏れや未提出による罰則等はありませんが、集まった情報を分析し、行政指導や税務調査に繋げています。
コロナ以前からこの制度はあるため、以前から利用されてはいましたが、コロナ禍において、よりじっくりと分析する時間があったことは容易に想像できます。
また、ニュース等で話題にもなりましたが、消費税の不正還付には依然として厳しいチェックが行われています。
実地調査の際に調査官に聞いたところ、所轄署でも重点項目としてチェックをしており、消費税不正還付と同様に、「国外取引」「海外資産」についても、着目しているとのことでした。これらの事案はいざ非違が確定されれば、追徴税額が大きくなる可能性が高いからだと思います。
そして、これは以前からの着目点ではありますが、商品券、ギフト券については、誰に贈ったのか、使途が何かについては、十中八九、確認されます。必ず説明できるように帳簿に記載するか、補助簿をつけて管理することをお勧めしています。仮に、取引先を提示出来ない場合は、役員賞与・重加算税の対象となる可能性もありますので、十分ご留意ください。
以上、最近の税務調査の動向等をお伝えしました。皆様の経営判断の一助になれば幸いです。
税務
2023.07.04
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
社長の平均年齢は年々上がっており、後継者不在による「後継者難」倒産が前年比で増えているというデータが出ています。
一方では、後継者が居ても事業承継が進まない、経営を譲りた くても譲れないといった事情もあるようです。
自社株の承継がなかなか進まない理由のひとつに株価が高い という問題がありますが、それだけではなく経営者にとっては、 会社の経営権(議決権)を手放すことへの不安 が承継に踏み切 れない大きな理由のひとつのように思われます。今回は、このような場面で有効な「信託」を使った自社株の承継をご紹介します。
手続きとしては、株式を贈与すると同時に、現経営者(甲)と後継者(乙)との間で、自社株についての信託契約を締結します。用語が専門的になりますが、委託者を乙、受託者を甲、 受益者を乙とする内容の信託契約を交わします。株式の所有権(議決権)は受託者にありますので、受託者である甲に議決権を残すことができます。それに対して後継者が 譲り受けるのは株式の所有権ではなく受益権です。所有権ではないため議決権を有することはありません。
後継者の立場からしますと、株式の財産的価値は譲り受けますが、経営は前経営者にそのままお願いできますかという意味合いの契約となります。
※税法上は甲から乙に対して株式の財産的価値の移転があったという扱いで贈与税がかかる点はご留意ください。
通常は自社株の財産的価値(株価)と議決権は、両者一体で 考えますが、信託にすることで両者を分離して扱うことができるようになります。信託契約の中で、「甲が死亡したら信託は終了し所有権は乙 に移る」という契約内容にしておけば、甲が死亡したときに議決権が乙に移り、乙は甲の死亡時に財産的価値と議決権を手にして信託契約は終了とできます。
あるいは、甲の意思で信託契約を解除し所有権を乙に移すという内容にすることもできます。
今後、会社経営も順調に進み、自社株の株価上昇も見込まれるのであれば、株価対策をして、信託を使った承継をすれば、 早めの事業承継が可能ではないでしょうか。さらに、万が一、現経営者よりも先に後継者が不慮の事故などで死亡した場合には、当然ですが現経営者が健在だとしても、承継してしまった株式は後継者の相続人である配偶者またはその子供(甲にとっての孫)に相続されてしまいます。このことに対して、不安に思う経営者もいるかもしれません。そういう場合でも信託を活用すれば、「後継者が先に亡くなった場合、次の受益者を後継者の兄弟とする」と定めることもできますし、「受益権を自分(甲)に戻し、信託契約は解除する」といった内容にもできますので、当初から先々のことも契約内 容に盛り込んでおけば、より安心して承継も進められると思い ます。
ぜひ自社の株式承継に活かしてみてはいかがでしょうか。
税務
2023.06.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
結婚や子育ては人生の中でも最もお金を必要とする時期かと思います。家庭を築くとなると、住宅の購入、引っ越し資金、子供の教育費などなど多くの経済的負担がかかります。このような重要なライフステージにおいて、親や祖父母から金銭的な援助を受けることも多々あるのではないでしょうか。
本日は、令和5年度税制改正で3年間延長(令和8年3月31日まで)になった「直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税について」制度内容や流れについて解説します。
受贈者(18歳以上50歳未満の者)が結婚・子育て資金に充てるために、その直系尊属が金銭等を出し、金融機関等に信託等をした場合には、信託受益権の価格又は拠出された金銭等のうち、受贈者1人につき1,000万円(結婚に関するものは300万円まで)までの金額に相当する部分の価額について贈与税が非課税となります。
※直系尊属とは父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。また、養父母も含まれますが叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。
【適用要件】
・贈与者が直系尊属であること
・受贈者が18歳以上50歳未満であること
①取扱金融機関において、受贈者名義の結婚・子育て資金口座の開設
②「結婚・子育て資金非課税申告書」を、金融機関を経由して受贈者の納税地の所轄税務署に提出
③贈与者が結婚・子育て資金口座へ金銭等を一括で拠出
④受贈者は結婚・子育て資金口座から払出しを行い、支払に充てた金銭に係る領収書等を、一定の期間内に金融期間に提出
⑤贈与税の申告が必要となるのは結婚・子育て資金口座に係る契約が終了した時など
④で払い出せる費用例は以下のものです。
■受贈者の結婚に際して支出する費用(限度額300万円)
ⅰ.挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日1年前の日以後に支払われるもの)
ⅱ.家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
■受贈者(配偶者を含む)の妊娠、出産又は育児に要する費用
ⅲ.不妊治療・妊婦健診に要する費用
ⅳ.分べん費等・産後ケアに要する費用
ⅴ.子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)
⑤にあるように結婚・子育て資金口座に関する契約ついて下記の3点のいずれかに該当すれば終了となります。
・受贈者が50歳に達した時
・受贈者が死亡した時
・口座の残高がゼロになり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があった時
上記内容の内、「受贈者が死亡した場合」については贈与税は発生しませんが、その他に該当した場合に最初一括で拠出していた金額が残っていた場合は贈与税の申告が必要となる場合があります。
また、贈与者が死亡した場合には、拠出していた金額の残高が相続財産となり相続税の申告が必要となる場合があります。
契約終了時や死亡した際に残高があれば贈与税や相続税がかかりますので、ご注意ください。
いかがでしたでしょうか。子供や孫などに贈与を検討される際は、ご活用いただければ幸いです。ご検討される場合は金融機関や税理士等にご確認ください。
<2024.12.18追記>
贈与の相続への影響あれこれ
https://www.upp.or.jp/management-blog/2023/12/7697/
税務
2023.06.02
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
令和 2 年 3 月 31 日をもって、一定規模以下の法人に適用されていた評議員の定款に関する経過措置が終了したことで、経過措置を適用していた法人では、令和 5 年 6 月(又 は 5 月以下同じ)に開催される定時評議員会の終結時点で、任期が満了する評議員が存在します。該当する法人について今年度は、評議員の改選の年になりますので、選任するのを忘れないように注意が必要です。
経過措置の終了に伴い、任期が異なる評議員が存在することを嫌い、全員の任期を合わせるために、令和 2 年 3 月某日にそれまでの評議員全員に一旦、辞任してもらい、即日、評議員 を選任している法人もあるかと思いますが、この場合も同様に、評議員全員の任期は、令和 5 年 6 月に開催される定時評議員会の終結の時までとなります。
評議員の任期は 4 年ですが、この場合、経過措置の関係で、該当する評議員については、実際の在任期間は 4 年に満たないことになります。社会福祉法上では、評議員の任期は、選任後 4 年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時 評議員会の終結の時までと定められているからです。例えば、令和 2 年 3 月 31 日に就任したとすると、その 4 年 後は、令和 6 年 3 月 30 日になります。この間に終了する会計年度のうち最終のものは、令和 5 年 3 月 31 日になります(令 和 6 年 3 月 31 日ではありません)。
従って、任期は令和 5 年 3 月 31 日に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結の時というと、つまり、令和 5 年 6 月に開催される評議員会の終結の時を指します。
評議員を選任するには、理事会で候補者を選び、評議員選任 解任委員会で、承認して貰わないといけません。また、令和 5 年度は理事・監事の改選に該当する法人が多くあると思われます。理事会等の招集のスケジュール管理で、手 続きや書類の整備が煩雑になりがちですが、適切に行われて下さい。