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令和7年度税制改正による「確定拠出年金制度」および「退職所得控除」の見直し

2025.03.18更新

こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。

 

1.はじめに

 「令和7年度税制改正大綱」により、確定拠出年金(以下、「DC」)制度および退職所得控除が見直しされる予定です。今回は、この制度の改正内容について解説いたします。

 

2. DC制度の改正

①趣旨・背景
DC制度は「自分が投資先を選んで運用する私的年金」であり、公的年金を補完し、安定した資産形成を支援するための制度です。令和7年度税制改正で、DCの拠出限度額の引き上げが実施されることとなりました。DCの拠出額は拠出時に所得控除となり、節税に繋がります。
また運用時には運用益が非課税となり、受給時に年金又は一時金で受給することができます。年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除の対象となるため、上手く活用すれば税制上有利な制度です。

②主な改正内容
複数の改正がありましたが、特に大きな改正は拠出限度額の引き上げです。例えば企業年金加入者の場合、改正前は月額5.5万円が限度でしたが、改正後は月額6.2万円に引き上げられます。また、企業年金未加入者の場合には個人型DC(以下、「iDeCo」)に加入する必要があり改正前の月額2.3万円から月額6.2万円に大幅に引き上げられます。

③影響
DC制度の「入口」である拠出額が引き上げられたため、使い勝手が向上しました。

 

2.退職所得控除の見直し

①趣旨・背景
DCの一時金と退職手当等の一時金を複数回受給する場合の税負担の公平性を確保するため、退職所得控除の計算方法が見直されることとなりました。なお退職所得控除とは、退職金受給時に勤続年数に応じて1年40万円(21年目以後は1年70万円)の控除が受けられる制度です。

②主な改正内容
税制改正前は会社から退職金を受け取る年の前年以前4年以内にDC一時金を受給した場合、勤続年数に応じた退職所得控除が重複適用されていました。改正後はDC一時金を受給してから退職金を受給するまでの期間が9年に延長され、退職所得控除の重複適用が厳しくなりました。

③影響と対応策
定年延長などにより、DC一時金と退職手当等を別々に受け取るケースが増えています。これまではDC一時金を先に受給し、その後会社から退職金を受給する場合5年以上経過すれば退職所得控除の重複控除が適用可能でしたが、今回の改正により10年以上期間を空ける事が必要になりました。退職金の受給計画を慎重に立てることが求められます。

 

3.総括

DCの「入口」である拠出限度額の引上げが行われた一方で「出口」の退職所得控除が減らされてしまうこととなりました。DCはNISAとは異なり所得控除を受けられること、受領時にも退職所得控除等を受けられることがメリットですが、年金制度なので60歳まで引き出せないというデメリットがあります。

また、NISAは売却益が非課税ですが、DCは運用時こそ非課税であるものの受領時には控除を超える分は課税されますので、メリット・デメリットを考慮して両者を使い分けることが重要になります。
制度が複雑でなかなか一読だけで理解するのは難しいので、気になる方はお気軽にご相談ください。


Michihito Suzuki

税理士法人アップパートナーズ
福岡博多本部