2024.12.03更新
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
会社の資金繰りが苦しくなったときに、社長(または他の役員)が運転資金を用立てたり、社長自身の役員報酬を取らないなどして資金繰りを助けた経験はありませんか。
この「役員借入金」が精算されず、逆にどんどん積み上がり、数千万円といった多額に膨れ上がっている会社も見受けられますので、今回は役員借入金のリスクと解消法についてお話ししたいと思います。
この役員借入金のリスクとは、役員が亡くなったときに「相続財産」になってしまうことです。思わぬところで相続財産となってしまい、相続税が無駄にかかってしまうだけでなく、遺産分割の揉め事にもなるリスクを孕んでいます。
この「役員借入金」の解消法は下記の4パターンが考えられます。
①役員報酬を減額してでも返済する
まずは、役員報酬を減額してでも、役員借入金を返済して減らすことです。
多額の役員借入金を減らすには時間がかかるかもしれませんが、早めに着手して時間をかけて減らすのがもっともいい方法だと考えます。
また、役員借入金の返済金は所得税も社会保険もかかりませんので手取りが増えるメリットもあります。
②借入金を債権放棄(債務免除)する
役員個人から見た「貸付金」を債権放棄してしまう方法です。法人の処理は債務免除によって役員借入金がなくなり、債務免除益(雑収入)が計上されます。債務免除益は、法人にとっては利益となりますが、繰越欠損金を持っていて、債務免除益との相殺が可能でしたら実行可能です。
債権放棄額は全額でも一部でもかまいません。そこは役員の意思に委ねられます。
この手法で気をつけたい点が、複数の株主がいる場合に、役員借入金を解消することで株価が上がり、他の株主への「みなし贈与」になってしまう場合があるということです。
(詳しくは税務担当者にお尋ねください。)
③相続人等に債権を贈与する
役員借入金を相続人等に贈与する方法です。借入金が解消したことにはなりませんが、役員の死亡による相続のリスクを考えると、毎年非課税枠の範囲内(年間110万円)で贈与しておけば、その分の相続リスクは先送りできます。
④資本金に振り替える(「DES」の活用)
負債を資本金に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ)という手法です。
具体的には、役員借入金を現物出資して新株を発行する方法です。資本金が増えるため増資と同じ手続きになります。
②の債権放棄の手法が取れない場合に検討することが多い手法です。
DESのメリットとデメリットは下記のとおりです。
◎メリット
・債権放棄と違って、原則として利益が生じない。(場合によって利益が生じる場合もあります。デメリットに記載)
◎デメリット
・債務超過などの会社の場合、債務消滅益があるとみなされ、利益になることもある。
・均等割(赤字法人でも納税義務のある法人市県民税で中小企業の最低額が71,000 円)が増える。
・株主が複数いる場合、株の価値増加によりみなし贈与(②参照)が発生してしまう可能性がある。
・手続きするのに、コストと時間(数ヶ月)がかかる。
相続リスクを考えて、役員借入金は放置せずに早めに解消することをお勧めします。
Toshiro Ohashi
税理士法人アップパートナーズ
佐世保オフィス