2024.08.01更新
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
今回は2020年7月10日から施行されております「法務局による自筆証書遺言保管制度」について要点を説明させていただきます。
内容はシンプルで読んで字のごとく「自分で書いた遺言書を、法務局で適正に管理・保管してもらえる」制度です。
遺言書の保管申請時には、民法に定める自筆遺言の形式に適合するかについて、外形的なチェックが受けられます。
また、遺言書の原本は遺言者死亡後50年間、画像データは遺言者死亡後150年間、適正に保管されます。
遺言の保管場所がわからず手続きされない、故意に破棄される、改ざんされる、被災により破損するなどの自筆証書遺言の弱点を、法務局で保管することによって解消できるというわけです。
保管制度を利用する場合は、作成した自筆証書遺言(A4サイズで上下左右の余白も決まりありなどの厳格な形式を守り、封はせずにばらばらで持参)を本人(代理人は認められない)が法務局へ持参して申請を行います。保管申請の手数料は3,900円です。
一度保管された遺言書・画像データはいつでも閲覧可能です。(遺言書原本の閲覧1回1,700円、画像データの閲覧1回1,400円)保管制度発足で弱点の一部は解消されました。
しかし、懸念事項はまだまだあります。
自筆証書遺言の形式面での煩雑さは何も変わっておりません。むしろ、法務局の遺言書保管官の外形的チェックが入ることで、様式に関しては以前より厳格になっていると思います。
また、相続発生後の自筆証書遺言の検認手続きは省略が可能となるものの、金融機関や証券会社で公正証書遺言(公証役場で作成した遺言書)と同じように円滑に相続手続きができるかどうかは微妙なところです。
そしてもう一つ、法務局では遺言内容について一切相談できませんので、相続で紛争が予測される場合に遺言内容の不備や欠落があれば、さらに問題が複雑化する可能性もあります。
制度開始から4年が経過しようとしており、2024年4月現在で73,199件の利用があるようですが、相続業務に携わる者の意見としましては、やはり自筆証書遺言より公正証書遺言が確実に手続きできる可能性が高いのではないかと思います。
どちらの形式で遺すにしても、一番大切なことは遺言書作成前に信頼できる相続の専門家に相談することです。
ご自身の想い、考えを整理し、残される大切な方々が揉めないために、どのような方法があってどれがベストなのか。正しく理解してから取り組みましょう。
Itsuho Sadamatsu
一般社団法人 相続手続支援センター