2023.07.18更新
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
新型コロナウイルス感染症が 5 類感染症に移行され、税務調査も以前と同様の調査スタイルに戻りました。基本は税務署からの事前通知後に任意の日時で、3 日間の実地調査です。
調査官の人数は事業規模によりますが、以前と比べ調査官 1名での実地調査が増え、2 名で来る場合は若手の調査官と退官後に再任用されたベテランの調査官のペアが多いように感じます。税務署も団塊の世代が退官し、人手不足のようです。
税務署は他の官公庁と違い、7 月から翌年 6 月が事務年度になっています。新しい事務年度が始まると、新たな署の体制となり、税務調査の依頼件数も増えてきます。
法人税および法人の消費税の実地調査件数は、コロナ以前は年間約 9 万件超で推移していたのが、コロナ禍の 2019 年事務年度を境に激減し、2020 年事務年度は約 4 分の 1 の 2 万件弱まで落ち込みました。このデータからも、7 月からの 2023 年新事務年度は実地調査依頼が大幅に増えることが予想されます。
コロナが落ち着き、実地調査が緩和されて以降の調査の動向は、調査対象、調査項目を事前にかなり絞り込んできている印象です。実地調査が長らく制限されていたので、当然と言えば当然なのですが、以前に比べてかなり念入りな下調べをしてきています。
調査官は事業関連性があると想定される通帳は法人・個人いずれの通帳も照会出来る権限を持っております。必要と判断すれば、金融機関に反面調査に行くことも可能です。
事前の情報があれば納税地だけではなく、代表者の出身地の地銀の口座を照会することも有り得ます。調査初日の午前中は調査官から事業概況の聞き取りがありますが、その雑談の中に、調査官にとっては有用な情報が混じっていることも認識しておいてください。
税務署は適正・公平な課税の実現の為に、「一般取引資料せん」(以下、資料せん)という情報収集を行っています。資料せんとは、国税局又は税務署から法人及び個人事業者の方々に依頼をし、売上や仕入、外注費や地代家賃等の一定の金額以上の取引があった場合、その取引先について住所や振込口座・取引金額等を所定の用紙に記載して提出するものです。
この資料せんは、任意の提出なので、記載漏れや未提出による罰則等はありませんが、集まった情報を分析し、行政指導や税務調査に繋げています。
コロナ以前からこの制度はあるため、以前から利用されてはいましたが、コロナ禍において、よりじっくりと分析する時間があったことは容易に想像できます。
また、ニュース等で話題にもなりましたが、消費税の不正還付には依然として厳しいチェックが行われています。
実地調査の際に調査官に聞いたところ、所轄署でも重点項目としてチェックをしており、消費税不正還付と同様に、「国外取引」「海外資産」についても、着目しているとのことでした。これらの事案はいざ非違が確定されれば、追徴税額が大きくなる可能性が高いからだと思います。
そして、これは以前からの着目点ではありますが、商品券、ギフト券については、誰に贈ったのか、使途が何かについては、十中八九、確認されます。必ず説明できるように帳簿に記載するか、補助簿をつけて管理することをお勧めしています。仮に、取引先を提示出来ない場合は、役員賞与・重加算税の対象となる可能性もありますので、十分ご留意ください。
以上、最近の税務調査の動向等をお伝えしました。皆様の経営判断の一助になれば幸いです。
Takahiro Mizoguchi
税理士法人アップパートナーズ
佐賀伊万里オフィス