2023.07.04更新
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
社長の平均年齢は年々上がっており、後継者不在による「後継者難」倒産が前年比で増えているというデータが出ています。
一方では、後継者が居ても事業承継が進まない、経営を譲りた くても譲れないといった事情もあるようです。
自社株の承継がなかなか進まない理由のひとつに株価が高い という問題がありますが、それだけではなく経営者にとっては、 会社の経営権(議決権)を手放すことへの不安 が承継に踏み切 れない大きな理由のひとつのように思われます。今回は、このような場面で有効な「信託」を使った自社株の承継をご紹介します。
手続きとしては、株式を贈与すると同時に、現経営者(甲)と後継者(乙)との間で、自社株についての信託契約を締結します。用語が専門的になりますが、委託者を乙、受託者を甲、 受益者を乙とする内容の信託契約を交わします。株式の所有権(議決権)は受託者にありますので、受託者である甲に議決権を残すことができます。それに対して後継者が 譲り受けるのは株式の所有権ではなく受益権です。所有権ではないため議決権を有することはありません。
後継者の立場からしますと、株式の財産的価値は譲り受けますが、経営は前経営者にそのままお願いできますかという意味合いの契約となります。
※税法上は甲から乙に対して株式の財産的価値の移転があったという扱いで贈与税がかかる点はご留意ください。
通常は自社株の財産的価値(株価)と議決権は、両者一体で 考えますが、信託にすることで両者を分離して扱うことができるようになります。信託契約の中で、「甲が死亡したら信託は終了し所有権は乙 に移る」という契約内容にしておけば、甲が死亡したときに議決権が乙に移り、乙は甲の死亡時に財産的価値と議決権を手にして信託契約は終了とできます。
あるいは、甲の意思で信託契約を解除し所有権を乙に移すという内容にすることもできます。
今後、会社経営も順調に進み、自社株の株価上昇も見込まれるのであれば、株価対策をして、信託を使った承継をすれば、 早めの事業承継が可能ではないでしょうか。さらに、万が一、現経営者よりも先に後継者が不慮の事故などで死亡した場合には、当然ですが現経営者が健在だとしても、承継してしまった株式は後継者の相続人である配偶者またはその子供(甲にとっての孫)に相続されてしまいます。このことに対して、不安に思う経営者もいるかもしれません。そういう場合でも信託を活用すれば、「後継者が先に亡くなった場合、次の受益者を後継者の兄弟とする」と定めることもできますし、「受益権を自分(甲)に戻し、信託契約は解除する」といった内容にもできますので、当初から先々のことも契約内 容に盛り込んでおけば、より安心して承継も進められると思い ます。
ぜひ自社の株式承継に活かしてみてはいかがでしょうか。
Toshiro Ohashi
税理士法人アップパートナーズ
佐世保オフィス