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役員退職金の実務上の取り扱いを解説します!

2023.05.02更新

こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。


1.はじめに

近年中小企業の代表取締役や個人事業主、または医療法人の理事長など、一般に社長と呼ばれる方々の年齢層が高齢化してきています。昨年時点での社長の平均年齢は 62 歳を超えているそうです。

これに伴って当社でも事業承継の相談を受ける機会が増えています。事業承継対策(中小企業の株価対策)において非常に重要になるのが役員退職金の活用です。
今回は、役員退職金の実務上の取り扱いについてご案内します。


2.役員に対する退職金のルール

法人税法施行令 70 条(過大な報酬を制限する規定)において、給与と並んで退職金についてもその金額の過大なものについては損金算入が制限されています。令 70 条 2 号では役員退職金のうち、
①役員のその内国法人の業務に従事した期間
②その退職の事情
③その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし過大なものについては損金の額に算入しない

と規定されています。

給与のように支給の仕方や決定時期についての詳細な制限はないのですが、その支給金額が過大な場合に限り否認リスクが
あるということになります。


3.役員退職金はいくらまで支給することができるのか

学説上は法人に対する貢献度、その他の特殊事情を考慮すべきとの考え方もあり、現在最も合理的であるとされる計算方法は功績倍率法とされています。

計算式は、  最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率 で算定をします。

功績倍率法は法令で定められている訳ではありませんが、多くの判例で妥当とされています。退職金規程で功労加算金をプラスするケースが見受けられますが、税務上は功労加算金を別枠では考えません。全て含んだ退職金額の上限額(損金算入限度額)が功績倍率法で計算した金額ということになります。

最終報酬月額については、有名な判例(残波事件)でも同業他社の「最高額」が採用されていますので、退職直前の報酬額を基準にすることでリスクを軽減できます。在任年数については争いになることは少ないでしょう。

功績倍率については、一般に社長で 3 倍と言われることが多いです。これは過去の判例で 3 倍前後が複数採用されたためと思われます。平成 29 年東京地裁判決でも平均功績倍率 3.26倍が採用されています。税務調査の場面では概ね 3 倍程度までは論点にあがることは少ないでしょう。

しかし、実際に審判所や地裁に場面が移ると、同業他社平均を抽出され 3 倍を下回る倍率が適用される可能性が大いにあります。また同業他社平均を納税者が事前に知ることはできませんので功績倍率を上げて退職金額を調整することはリスクとなります。

リタイア後に必要な金額、株価対策に必要な金額を事前にシミュレーションし、時間的な余裕をもって最終報酬月額をプランニングすることが望ましいと言えます。



Kengo Matsumoto

税理士法人アップパートナーズ
福岡オフィス

役員退職金の実務上の取り扱いを解説します!