個人医院の承継とは?
親族内承継の場合
個人医院で誰かに承継する場合、それが子息であっても既存の医院は「閉院」となります。そして、新しく医院を「開業」することになります。
よって、雇用も保険診療に関する事項(施設基準等)も原則として全てやり直しとなります。
時折、「医療法人にするのが面倒だ」という声を耳にしますが、承継に関しては個人医院の方が手続きが煩雑で、スケジュールもタイトであることが多く、しかも金銭的に損をすることが多いです。
また、うかつに医院の内装や医療機器などを新院長に渡してしまうと、贈与税の対象となります。贈与税は税率がかなり高く設定されているため特に注意が必要です。この場合は、賃貸借契約を結ぶなどして、贈与認定されないように対策が必要です。
第三者承継(M&A)の場合
昨今は第三者に医院を売却することも多いです。しかし、M&Aにおいて税務的に最も損をする可能性が高いのが個人事業の医院となります。
なぜなら、M&Aで入ってきた資金は全て雑所得となり、所得4,000万円を超える部分には最高税率区分45%+住民税10%=55%が適用されることになるからです。逆に最もお得なのは持分あり医療法人で、概ね15~28%ほどで済みます。
医院の売買の相場は(収入の1年分+不動産や医療機器の時価)がベースとなりますが、実際はこれよりかなり低くなることが多く、建物や医療機械だけの取引となることもしばしばです。これは患者さんの引き継ぎが形式的に不可能なためです。弊社が経験した例では、2億円かけてつくった医院が900万円で取引された事例がありました。医療機器などは、一部を除いてほとんど評価されないとお考えください。
よって、M&Aをお考えの場合は、医療法人化を併せて検討することをお勧めいたします。